
多くの方々の協力で念願のクリニック開院ができましたこと、こころから感謝いたします。
当院は、中国伝統医学の叡智に日本の最新の漢方研究成果を取り入れ、効果第一を目標として追求し続けます。
院長 李 向軍

国医大師(日本でいう人間国宝)に師事し、勉強しました。





北京中医薬大学校長 徐 安龍先生と
がん、不妊症、難治性皮膚病などの中医(漢方)治療を講演しました



「中医臨床」の特集に当院の進行胃がんと再発卵巣がんに対する漢方治療が掲載されました。
がんに対する標準治療は進歩しているものの、進行がんや再発がんでは治療継続が困難となる症例も多い。漢方は、患者の体質や症状に応じて全身状態を整え、副作用軽減やQOL向上に寄与する可能性があるが、その有効性に関する報告はまだ十分ではない。本稿では、StageⅣb胃がんおよび再発卵巣がんに対し、漢方治療が臨床的改善に寄与した2症例を報告する。
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X年10月、心窩部痛を主訴に近医を受診。胃カメラ、および細胞診にて胃腺がんと診断され、某大学病院へ紹介された。CT、PET-CT、腹腔鏡検査などの結果、胃がん・腹膜転移を認め、胃がんStageⅣbと診断された。抗がん剤オキサリプラチン+TS-1(内服)で治療を開始。漢方薬の併用を希望されたため、当院を受診。
煎薬は小柴胡湯をベースに加減。また「胃反嘔吐者、大半夏湯主之」に基づき半夏・人参を増量した。西洋薬の抗がん剤により肝機能障害が生じやすく、黄芩は日本人で肝機能障害の報告が一定数あるため、念のため処方に加えなかった。
黒色便および胃カメラ、血液検査から胃がんの出血が確認され、止血剤を内服したが、改善が乏しかったため、烏賊骨・仙鶴草・旱蓮草を加えて止血・健脾・補陰・免疫強化を図ったところ、黒色便が消失した。
仕事にも復帰した。主治医によると「このような症例を診たことない」とのことであった。その後も体調に応じて、煎薬を微調整。
現在、半年ごとの定期検査で再発は認めず(すでに一年半経過)。
StageⅣの胃がんの平均余命は約8か月とされ、予後不良である(九州大学病院デーダ)1)。
本症例では、初期治療として抗がん剤が投与され、原発巣の縮小を確認したて後に胃全摘術が施行された。術前・術後に抗がん剤治療を継続しつつ、副作用軽減と症状緩和を目的に漢方薬を処方した。しかし、患者本人が抗がん剤による副作用を強く訴えたため、抗がん剤を中止せざるを得ない状況が度々生じ、その後は漢方薬のみで治療を継続する時期もあった。
本症例では、抗がん剤による体質・症状の変化に対し、弁証・弁病に基づいて適宜漢方処方を調整した。特に脈診と自覚症状の変化が敏感に反応したため、それらを重視して処方を変更した(舌診、腹診も参考にした)。
本症例は、西洋医学的治療で難渋するがん患者や終末期がん患者に対し、漢方薬が有用な選択肢となり得ることを示唆するものである。
X年3月、腹部膨満を自覚し近医婦人科を受診。卵巣がんが疑われ、総合病院に紹介された。精査の結果、卵巣がんと診断され、子宮・両側付属器切除および骨盤リンパ節廓清が施行された。術後の確定診断は卵巣がんⅠb(明細胞腺がん)。再発の可能性は高くないものの、術後化学療法を勧められたが、本人に抗がん剤への強い抵抗感があり施行されなかった。
その後の2年間、定期検査では異常を認めなかったが、X+2年4月にCA125の上昇(86U/mL)を認めたため、総合病院で精査を行い、卵巣がんの再発と診断された。抗がん剤の治療を勧められたが、本人はこれを拒否し、漢方による治療を希望して当院を受診した。
その後、体調変化に応じて漢方を調整しながら治療を継続し、すでに5年経過しているが、CA125は正常範囲を維持し、画像診断でも転移を認めていない。
卵巣がんは死亡率約70%と、婦人科悪性腫瘍の中で最も予後不良の疾患である2)。早期卵巣がん(明細胞腺がん)で手術後に再発がなければ比較的予後は良いものの、再発例では、抗がん剤に抵抗性を示すケースが多く3)、必ずしも良好な経過を期待できないのが現状である。
中医学では、卵巣がんの発生機序として「臓腑虚弱・陽気が衰弱から寒湿が侵入し、肝鬱気滞が加わり、さらに進行すると痰湿・瘀血が形成され『癥瘕』となる」と考えられている4)。
本症例では、痰湿・血瘀の証を認める一方、更年期症状を伴っており、寒熱錯雑の状態であったため、治療が難しい症例であった。温経湯および柴胡四物汤の方意を参考にしつつも、初期段階で温剤の使用は避けた。特に更年期症状を持つ患者では、清熱・滋陰薬にわずかなシナモン類を加えただけでも耐えられないケースもあるため、慎重を期し桂枝は使用しなかった。また、患者が地黄による腹痛・下痢を訴える体質であったため、清熱・滋陰には、胃腸への負担が少ない女貞子・旱蓮草を用いた。
睡眠改善のために酸棗仁に加えて麦門冬を配合した。これは温経湯の方意にある「肺は腎の母であり、虚すればその母を補う」に基づく。䗪虫は抗癌作用に加え、通絡活血の働きがあるため用い、白英はがん治療でしばしば使用される生薬であり、自分の師も肺がんや卵巣がんに対して好んで使用していたことから、半枝蓮と併用した。更年期の症状が改善した段階、呉茱萸を追加し、腹部の痰湿のさらなる改善を図った。
本症例は、術後卵巣がんの再発に対する漢方治療が、再発の予防に寄与する可能性を示唆する結果となった。
2症例は、いずれも西洋医学的治療のみでは対応が難しい状況にあったが、漢方治療により症状のQOLの向上とがん進行の抑制が得られた。これらの結を踏まえ、漢方が進行がんや再発がんにおける補完的治療として有用である可能性を示唆する。さらに症例の蓄積と検討が望まれる。