婦人科の病気に漢方治療は優れた効果があります。日本の婦人科の先生たちも好んで漢方薬を処方しています。県立尼崎病院東洋医学科に勤務した時も、月経不順を始め、多くの婦人科の病気を改善させました。
女子不妊症の原因は、排卵障害、黄体機能不全、卵管に通過障害、子宮内膜症、着床しにくい、免疫性(抗精子抗体)、原因不明などに分類される。特に卵巣の老化、子宮内膜症による不妊症が大半を占める。
高度生殖医療は革新的に進歩していますが「加齢に伴う卵巣機能の低下」「着床障害」「習慣性流産」という難題に突き当たっています。卵子の質は、加齢とともに低下し、30歳を過ぎると下がる一方で、高度生殖医療をもってしてもカバ―出来ないのです。35歳で不妊治療した人のうち、子供が生まれた割合は16%。40歳に至っては8%です。45歳を超える女性の場合は、体外授精を利用しても妊娠できる可能性は0.5%ほどになっています。
漢方と西洋医学の併用で子宮内膜の状態、卵子の質を上げることができます。 中国10数年前より、不妊症の治療で人工授精・体外受精も盛んに行ってきました。単なる西洋のみの治療より、漢方および鍼灸の併用のほうが、妊娠率は上がることがわかってきました。例えば、北京大学病院生殖中心の最近の研究で、体外受精を受ける368組不妊症の方を2組に分かれ、184組の方が西洋のみの治療を184組の方が漢方と西洋治療の併用を受けました。
結果的に、
でした。
一人一人の体質に合わせて、一番合う漢方薬を処方すれば、さらなる効果が期待できます。
西洋医学では不妊症の原因を細かく、たくさん分けていますが、中医学も弁証によって、分類されています。冷えはその中の一つですがすべてではありません。体を温めることはいいですが、すぎると逆効果の場合もあります。自分で判断せずに専門の漢方医に診てもらった方が賢明です。
不妊治療に日本漢方ではよく“当帰芍薬散”“八味丸”“温経湯”を処方しています。「当帰芍薬散が効かなければ、温経湯を処方します」と、このような考え方を私はしません。当院中医の不妊治療は、中医弁証と弁病より一人一人の体質に合わせて、一番合う漢方薬を処方します。なぜなら、不妊症といっても原因はいろいろですし、一人一人の体質も違いますから。 例えば子宮内膜症という一つの診断に対して、「気滞」によるもの、「瘀血」によるもの「湿熱」によるものなどがあります。原因が違うので、処方する生薬も違ってくるし、症状の重度化により生薬の量も変えていかないといけません。正しく弁証論治しないと期待できる効果を得られません。
基本的に中医学の弁証論治と弁病論治を合わせて処方しますが、ホルモン製剤を内服中の方であれば、西洋医学の治療歴、検査結果を参考にし婦人科と連携して治療いたします。
月経周期が不安定、月経の量が少ないか止まりにくい、腰がだるい、痩せ型、手足のほてり、口が渇く、時に眩暈 耳鳴あり、舌が紅く舌苔が少ない、脈が沈、細、無力か細数などの特徴がある。
月経後期が多い、月経血は量が少ない、ひどい場合は閉経、腰がだるい、手足が冷える、時に眩暈耳鳴あり、夜間頻尿、顔色が黒ぽっく 舌色が淡く、舌苔薄い、脈は沈細無力などの特徴がある。
月経不定期、月経前乳房が張る、脇部の痛みがある、精神抑欝または怒りっぽい、舌色が淡くあるいは紅い、脈は弦などの特徴がある。
肥満が多い、月経量が少なく周期が長いか閉経、眩暈、倦怠感、胸が詰まるような感じがある、舌苔が白く厚い、舌体が肥大、脈は滑などの特徴がある。
月経前イライラ、乳房が張る感じ、生理痛がひどい、時に下腹部の刺痛があり、血量少なく色は濃い、血の塊あり、舌色暗紫、瘀点、瘀斑、脈は細渋か弦などの特徴がある。
※臨床上では以上の症状が重なる場合が多く、それぞれの体質、中医弁証により調剤します。
腎虚が多く、補腎中心に治療する。
気虚瘀血、腎虚瘀血が主な原因である。
肥満の方が多く、体が冷える。中医弁証では腎虚と痰湿が中心である。
・名老中医許潤三教授の通管方を使います。中日友好病院など臨床研究で 3ヵ月間で6割、6ヵ月で8割の患者で効果を認めたという結果でした。
・両方に完全通過障害の場合は、効果が落ちます。
腎虚と血瘀の場合が多い。補腎固胎が基本の治療方針。
陽虚宮寒が多い。養血補腎 助陽調肝
先天不足、腎虚が主な原因の場合が多い。
陰虚の場合が多いが陽虚の場合もあります。
※同じ病名でも、中医学的に証の違いが多く、中医弁証により方剤の構成を調整する場合が多いです。
腎虚、肝鬱が主な原因である。
腎陰虚、腎陽虚の場合が多い。
腎虚と湿熱が主な原因である。
(湿熱の場合)
(腎虚の場合)
※中医弁証により生薬の構成が変わる場合があります。
北京同仁堂の専属専門家梁貽俊先生、中日友好病院中医婦人科の許潤三先生、趙紅先生、辛茜庭先生などに師事し、婦人科病気の中医治療、特に不妊症の治療について学びました。
許潤三先生
500老中医の一人
北京中医薬大学教授
梁貽俊先生
500老中医の一人
北京同仁堂専属専門家
アメリカ中医薬研究院学术顧問
北京中医薬大学教授
趙紅教授
許潤三先生の弟子
中日友好病院中医婦人科主任
中国中医薬研究促進会生殖医学分会 副会長
中医婦人科の名医郭志强先生の弟子
李仁傑主任医師
入院不妊症患者さんに脈診をしている風景
(写真の掲載に患者さんの同意あり)