COVID-19では、インフルエンザのような発熱、咳、痰などの感冒様症状以外にも嗅覚障害、味覚障害、消化器症状(下痢、嘔吐)、耳鳴り、脱毛など多様な症状を訴える患者がいることが分かってきました。当初、世界保健機構(WHO)は中国の報告から、軽症なら約2週間、重症であれば3~6週間ほど回復に時間がかかると発表していました。しかし最近になって、本邦を含む世界各国からCOVID-19罹患後、長期に症状が遷延するいわゆる「後遺症」の報告が相次ぎ注目されています。
本邦の調査はまだ十分ではありません。イタリアからの報告(n=143)1)では、症状出現後、約60日の段階で少なくとも1つ以上の症状が残存している患者は87.4%にのぼります。症状として、倦怠感が53.1%、呼吸困難感が43.4%、関節痛が27.3%、胸痛が21.7%に認められており、その他、咳嗽、嗅覚脱失、目や口の乾燥、鼻炎、眼球充血、味覚障害、頭痛、喀痰、食思不振、咽頭痛、めまい、筋肉痛、下痢など様々な症状が認められました(図1)。32.2%の患者に1~2つの症状があり、55.2%の患者に3つ以上の症状が認められました。また、44.1%の患者にCOVID-19罹患後60日の時点でも生活の質の悪化が見られました。
フランス2)では、入院後約110日以上経過した時点で、55%で倦怠感、41.7%で呼吸困難感を認められたのは前述の報告と同様に高頻度でしたが、34.2%で記憶障害、30.8%で睡眠障害、26.7%で集中力の低下、20%で脱毛が認められました。ドイツからの報告3)では、診断後約70日の時点で(n=100)血液検査や心臓MRI検査を施行したところ、71%で高感度トロポニンTが検出され、また、きわめて高率(78%)に心臓MRIに異常を認められたといいます。検査の結果、心血管系の障害は頻度が高いと考えられます。
また、COVID-19の特徴的な症状として嗅覚・味覚障害があげられますが、イタリアからの報告4)では診断時に味覚障害、嗅覚障害を認められた軽症患者では、発症から4週間の時点で48.7%(55人)は完全に改善し、40.7%(46人)で状態が改善したものの、10.6%(12人)で症状の残存もしくは悪化が認められたといいます。前述の入院後約110日目の調査においても嗅覚障害が13.3%、味覚障害が10.8%認められていたといいます。
これらの「後遺症」は、COVID-19によるものかどうかは不明のものも含みますが、以下のような原因が絡み合った複合的な病態であると考えられます。
日本においては感染を公表した芸能人たちも、後遺症に悩んだといいます。「後遺症外来」で多いのは、複数の症状を訴える患者だといいます。患者が訴える、もっとも多い症状には倦怠感(だるさ)のほか、ブレイン・フォグ(脳に霧がかかったようにぼんやりする状態)があります。これは、作業に集中できなくなるなど、仕事に直結する厄介な症状で、働けなくなっている方もいます。また、微熱、血管の浮き、脱毛、体のピクつきなどの神経症状…みんな複数の症状を訴えています。治療法としては、漢方薬を含めた医薬品の処方のほか、運動を控えさせたり、食習慣を変える生活指導など、さまざまです。
また、研究で明らかになったのは、高次の認知といわれる能力に、特に目立つ後遺症が見られることです。元患者の注意力、論理的思考力、特に口頭で論理的思考力を展開する能力について、研究論文の共同執筆者である英インペリアル・カレッジ・ロンドン脳科学部のアダム・ハンプシャーが本誌に語りました。
入院中、呼吸器の症状が深刻化して人工呼吸器をつけた20~70歳の元患者の思考力は、退院後に平均で10歳年上の人のレベルにまで減退していました。今回の研究データは「新型コロナ感染が慢性的な認知力の低下という後遺症をもたらす可能性がある」ことを示唆していると、研究チームは述べています。また、新型コロナ感染症から回復した後で、脳卒中や免疫系の過剰反応および炎症などの合併症に起因する神経学的な問題が生じる可能性を示す研究が数多く行われている点も指摘しました。
2021年9月8日の英医学誌ランセットに掲載された新型コロナウイルス感染後の論文で、感染拡大が最初に起きた中国の武漢で、入院した患者の大部分が感染から半年経過した後も疲労感や睡眠障害などの症状が続いているという調査結果を、中国の研究チームが発表しました。
研究チームは武漢で新型コロナウイルス感染症のため入院した患者1,700人以上を調査しました。その結果、76%は退院から数か月たった後も症状が続いていることが分かりました。
今回の調査結果は、患者がたとえ新型コロナウイルス感染症から回復したとしても、長期にわたる後遺症に見舞われる可能性があることを示唆しています。新型コロナウイルスの感染者は世界で9,000万人を超えています。
新型コロナウイルス感染症患者の後遺症は疲労感が63%で最も多く、次いで睡眠障害の26%でした。
精神症状に苦しむ人も多く、23%は不安やうつを訴えていました。重症化した患者は、X線検査で肺の損傷が継続して認められる傾向がありました。
オリジナル漢方処方を提案します
当院 李向軍先生共著 COVID-19と中医学(清肺排毒湯を担当)
当院は、新型コロナウイルス感染症の軽傷・中等度症に対して清肺排毒湯をそのまま使うのではなく、その方剤をベースにして、その方意をよく理解した上で独自の臨床経験や既にある漢方エビデンスを元に、日本の地域・気候特徴、日本人の体質なども考慮し、COVID-19から身を守るためのオリジナル漢方処方を提案します。
2020年3月、発熱、全身倦怠感が強く、咳、痰も認められたので、保健所の指示で検査を受けた。その際、新型コロナウイルスPCR(+)と診断された。熱冷まし、咳き止めを処方されたが、症状が改善せず、逆に全身の痛みも感じるようになり、頭痛、頭がボーっとするため、漢方薬による治療を希望されて、当院の遠隔診療を受診。
清肺排毒湯を加減して処方。5日後に熱が下がり、2週間後、普通の生活に戻られた。全身倦怠感、頭痛も消失して頭もすっきりした。後遺症はなく通常の生活に戻られた。
発熱、悪寒、下痢、強い全身倦怠感あり。新型コロナウイルス感染症PCR(+)と診断されて自宅で療養されていた。カロナールなどを内服したが改善しなかった為、当院の遠隔診療を希望された。症状と舌診にて漢方薬を処方したところ、悪寒、下痢が改善され、微熱があるものの、食欲も出てきた。1週間後、全身状態が改善され、熱も出なくなった。その後、職場に復帰した。
2021年8月上旬に発熱、悪寒あり。病院で検査を受けて新型コロナ感染症PCR(+)と診断された。その際、軽症と言われたので、カロナール、メキコンなどを内服したが、熱が下がらず、痰を伴う咳、全身筋肉痛がひどくなり当院の遠隔診療にて受診、漢方薬を処方した。内服2、3日後、熱が下がり、咳、痰が消失し、後遺症もなかった。
新型コロナウイルス感染症の軽症・中等度症(自宅療養、施設に入院している方)に遠隔診療を実施します。
具体的な方法は、オンライン診療のページでご確認いただくか、お電話でお問い合わせください。
清肺排毒湯の成分は保険外生薬です。病状を早期改善させ、後遺症がなるべく残らないように、その方の症状に応じて漢方薬を処方するため、自費診療を中心とした治療を行います。
費用 | 10,000円~20,000円前後/週 |
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2020年5月、新型コロナウイルス感染症のため入院された。重症のため、人工呼吸器をつけた。退院後も倦怠感が強く、動悸、息切れがあり、会社で前までバリバリしていた仕事が「無理そうだ」と感じられたため、当院を受診された。漢方薬を処方後、倦怠感が徐々に改善され、頭の回転も早くなり、CT検査で間質肺炎の改善も認められた。
退院時
漢方治療後
症状:頭がすっきりしない、ぼーっとする、記憶力低下。
新型コロナウイルス感染症による熱が下がっても、倦怠感が強く、たまに咳が出る、頭がスッキリしない、といった症状が続く。感染前は簡単に処理できた仕事でも(感染後は)すごく時間がかかりいつも時間が足りない感じする、忘れっぽい、等の症状が増え、上司からもよく指導されるようになった。ストレスもたまり、うつ状態になり、西洋の薬を飲んだが改善しなかった。当院で漢方薬を内服後、倦怠感が改善して、睡眠も前よりぐっすり眠れるようになった。頭の回転も回復して、めまいような症状、頭が重い、といった症状はほぼ消失した。
現在も通院中である。
2021年6月、新型コロナウイルスに感染した。「軽症」といわれたが、全身のしびれ感、嗅覚と味覚が消失して、不眠、頭痛、全身倦怠感が強かった。西洋薬を処方されたが特に効果は認められなかった。
漢方内服2週間後、不眠、頭痛が改善され、しびれ感も徐々軽減した。3か月後、嗅覚と味覚は回復したが、やや倦怠感が残っている。現在、漢方継続中である。
来院時
治療後
2021年5月、新型コロナウイルス感染症と診断された。時間がたつにつれ高熱は下がったが、微熱の繰り返し、食欲低下、嗅覚がおかしい、全身の痛み、が続いた。カロナールを内服すると熱が下がり、飲まなければ微熱が続く、という状態が続いた。近医よりうつ状態も診断された。
漢方薬を服用すると、食欲が改善されて微熱も出なくなり、全身の痛みも軽減された。
2か月後、嗅覚を感じるようになり、体の痛みも消失した。
4か月後、うつ状態が改善されて、熟睡できるようになり、仕事に復帰した。
来院時
1か月後
3か月後
2021年3月、新型コロナウイルスに感染した。その後、熱は下がったが、湿疹、全身のかゆみ、倦怠感、しびれ、頭がぼーっとする、などの症状があり、味覚と嗅覚も消失した。
弁証より漢方薬を処方した。1か月後、倦怠感、かゆみが改善され、3か月後、味覚、しびれ、めまい感、頭がぼーっとする、といった症状の改善が認められた。半年後、嗅覚も戻り仕事に復帰した。
症状:集中力低下、怒りっぽい
2021年6月、新型コロナウイルスに感染した。しばらくして熱は下がったが、倦怠感、頭がぼーっとする、集中力低下、などの症状があった。もともと落ちついた性格であったが、怒りっぽくなり、ちょっとしたことで怒り出して睡眠障害も認められた。
漢方を内服してからは、倦怠感、睡眠障害が改善され、怒りっぽい症状も治まった。
集中力も徐々に回復し、成績の改善も認められた。現在、漢方を継続中である。
後遺症の弁証は難しく、上記の患者さんの舌の変化を見てわかるように、後遺症の弁証と漢方治療は甘くありません。多くの患者さんに、エキス剤では効果が薄いと感じています。いち早く体質が改善して、昔の元気な心身状態に戻るために、現在当院では煎じ薬で自費診療を中心に治療を行います。
費用 | 1,000円~1,500円/日 |
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煎じ薬は不便と思われる方には、当院に投入した煎じ機による煎じ代行が可能です。
費用 | 200円/2バック/日 |
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